死んだはずのぼくの魂が、ゆるゆるとどこか暗いところへ流されていると、いきなり見ずしらずの天使が行く手をさえぎって、
「おめでとうございます、抽選にあたりました!」
と、まさに天使の笑顔をつくった。
(以下、橙色の字は引用)
もうずっと前から、書名だけは知っていた。話題作には満足できないことが多いせいか手に取らなかったのだけれど、この冒頭を読んで、これはきちんと読んでみようと思った。誰かの「仕掛け」で話題になった作品とは違う香りがしたからだ。
『カラフル』/森絵都
イラスト:長崎訓子
ブックデザイン:池田進吾
発行:理論社
黒もあれば白もある。
赤も青も黄色もある。
明るい色も暗い色も。
きれいな色もみにくい色も。
角度しだいではどんな色だって見えてくる。
この世界にはいろいろな色がある。
人にも、いろいろな色がある。
当たり前のことだけれど、その当たり前のことを意識して過ごすことが、なかなかできていない気がする。自分が見て判断した考えだけで観念を固定して、固定してしまえば覆すことがない。面倒くさかったり、自分を否定したくなかったり、理由はさまざまだと思うけれど、なんとなく、そうだ。
この物語は、そんなふうに自分が見た世界と現実との差異に衝撃を受けて自殺した少年「小林真」の、その体を一時的に借りて「輪廻のリベンジ」に不本意ながら挑戦させられている魂「ぼく」が主人公だ。
すでに死んでいた魂の「ぼく」が生前の自分を思い出すことができれば、「ぼく」はまた生まれ変わることができるという。
でも、「ぼく」にはあまり意欲がない。天使の「プラプラ」に強要させられるまま、さえない中学生「小林真」の代役を務めはじめる。
筋もディテールの役割もぼんやりと予想がついてしまうのだけれど、それでも不満足な部分はまったくなかった。「ぼく」のシュールな目線と人物たちのコミカルな会話が、妙にリアルで無駄がない。
無駄がなく筆者のエゴもない。文章がきれいで豊か。大事なことをすっきりと教えてくれる。そんな本が好きで、だからわたしが惹かれるものには児童書が多いんだろうな、と思う。
人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはみんないつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。
ぼくはまぶたの裏にぼくをまつ人たちのいる世界を思い描いた。
ときには目のくらむほどカラフルなあの世界。
あの極彩の渦にもどろう。
あそこでみんなといっしょに色まみれになって生きていこう。
たとえそれがなんのためだかわからなくても――。
こんな表現にすべてが集約されている気がする。
とても大事なことを「当たり前だから」と見過ごさないで、いつもかみしめていたい。
うっかりすると忘れてしまいそうな自分だから。
このブログを始めてみたのも、出会ったひとくさりひとくさりを憶えていたくて、それでだったのかもしれない。
このごろ、心の底から素敵だなぁと思える本になかなか出会えないのだけれど、新しいものに出会うより、すでに出会ってきた素敵な本にまた会って、また感動して……という時期にきているのだろうか。
最後は、わたしがこの本でいちばん好きな言葉を。
しぶとく生きろ。
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